LYNCSブログ

慶應義塾大学公認学生団体 宇宙科学総合研究会(LYNCS)のブログです。

文系学生が3アマ・4アマ(アマチュア無線技士)を最短一晩の勉強時間で取得するための方法

CanSatやドローン、実衛星(CubeSat)の通信にはアマチュア無線の帯域(バンド)を使うものがあります(特にドローン・実衛星は必須とされます)。
技術的には挑戦可能なのに、資格がないためそれらを使えない……というのは勿体ないと思います。

文系学生や文系出身者にとって、3アマ・4アマは「専門知識の要る理系の資格」と思われがちですが、そんなことはありません。最短で一夜漬けでも合格できます。
一夜漬けは極端な例ですが、きちんと勉強すれば1週間程度で合格できるでしょう。

理工系に理解のある学生なら更に余裕でしょう……というか、そもそも文理関係ない資格です。
「無線技士」という堅そうな名前にビビらず、いろいろな方が資格を気軽に取得して無線を活用していただけたらと思い、本記事を書きました。

(この記事は部内wikiに記録していたものを外部公開用に再編集したものです。)

筆者の情報

(執筆・取得時)

  • 文系学部生
  • 高校時代から理数系科目が苦手
    • センター模試(当時)で数学IA・IIBの点数が相当ひどかった
    • 物理も散々だったため科目選択で「君は~物理はやめといたがいいなあ~」と言われたことがある

こう書くと完全にアホの子で恥ずかしいのですが、この程度の学生でも3アマなら余裕でなんとかなります。

どういう資格なのか

  • アマチュア無線は基本的に「非営利の研究・趣味」のための無線です。
  • モールス信号で「トントンツー」したり、音声で交信したりできます。
  • モールスは3級以上。
  • 地味に国家資格で、一生モノです。
    • 更新もなく、若いうちの証明写真をそのまま使い続けることができるので早く取ると若々しい免許証で一生を過ごせます。
    • ただし残念ながら、業務に使える資格ではないので就活には活かせません。通信系の会社なら話のタネにはなるかも、くらい。
  • 1級~4級があります。基本的に、出力できる電波の大きさによって級が分かれています。他にも無線資格にはいろいろ種類があるので、「アマチュア無線技士」であることを明示するために「3アマ」(第3級アマチュア無線技士)などと呼ばれます。

何級を受ければいいのか?

この記事は3アマ4アマを受験する方を想定した記事ですが、一律で3アマをおすすめします(別に4アマでも良いですが)。

ドローンやCanSatの用途であれば4アマで十分なケースも多く、じゃあ4アマでよいのではないかという話になるのですが、3アマと4アマで試験難易度に本質的な差がほとんどないというのが実情です。

難易度

3アマの合格率は約80%程度です。ビビる必要は全くありません。
運転免許の学科試験の合格率が75%程度ですから、車の免許を取るより簡単ということになります。

とはいえ「名前を書けば受かる」わけではなく、20%の人は不合格になってしまうものなので、その20%に入らないための対策法をこの記事で解説していきます。

そもそも、アマチュア無線各級の難易度ですが、

1アマ2アマ>(大きな壁)>3アマ≧4アマ

と考えておけば良いと思います。2アマ3アマの間に大きな壁があるとだけ認識しておいてください。
実際、4アマは合格率が70%後半、3アマは80%以上あるようなのですが、2アマは40%台、1アマは30%台となります。かなり差があります。

ちなみに3アマ・4アマは小中学生の取得者も多い資格です。決して「ガチプロしか受けないので合格率が高い」という試験ではありません。

私だけの意見だとアレなので、外部サイトもいくつか紹介しておきます。

shikaku-kentei.babyblue.jp

www.shikakude.com

なお、本当に自信がない人は「講習会」という手もありますが、受講料が23000円ほどするのであまりおすすめしません。
未経験者でも、以下に示す勉強方法で十分戦えます。

3アマと4アマの試験における違い

大きな違いはモールス符号の有無です。それ以外にも細かい違いはありますが、初心者が挑む場合はほぼ無視できるレベルです。
かつてはモールス符号を聞き取るテストがあったそうですが、現在は紙に書いてある文字をモールス符号に直し、選択肢から正答を選ぶだけです。ちょっと迷っても選択肢で正しい答えを導き出せるレベルです。

モールス符号は語呂合わせで覚えることができます。
「音」と対応付けるのは実際にアマチュア無線を運用するようになってからで十分です。

必要な教材

第3級ハム国試 要点マスター の最新版、この参考書を強くおすすめします。(ハム=アマチュア無線のことです)

これ1冊あれば十分です。あとで確認用のWebサイトも紹介しますが、まずはこれでいいでしょう。

「要点マスター」は前半が過去問集後半が参考書となっています。
なんかちょっと変ですよね?普通、参考書で理解してから過去問に進むはずなのに……。

勉強法

とにかく暗記!

要点マスターで前半部分が過去問になっているのには理由があります。

3アマ・4アマの勉強法で一番重要なのは全部暗記だと割り切ることです。
ある意味悲しいことではあるのですが、3アマ・4アマの受験は過去問を暗記して臨むことが事実上の標準となっています(4アマに至っては「完全丸暗記」と称された、暗記を推奨する参考書がベストセラーです)。というのも、かなり高頻度で試験が実施されている上、出題の範囲が狭いことにより、出題される問題のほとんどが過去問の使い回しとなっているからです。

普通の勉強なら参考書から始めるかと思いますが、前半の過去問から解き進めてください。
「そんなの分かるわけねーよ」となりますが、それでいいのです。「この問題文が出たらこの回答だ」というノリで構いません。にわかには信じられない勉強法ですが、私も無線サークルの先輩からそれがベストだと教えられました。

もちろん、過去問には対応づけられた参考書のページが記載されています。「これどういう事やねん?」となってきたら後半の参考書を都度読んでみて、また問題に戻るというのを繰り返せば良いでしょう。

無線工学の対策

序盤は「本当にこんなん暗記して大丈夫なのか?」と疑心暗鬼になりますが、大丈夫です。覚えていきましょう。
もちろん解答の番号ではなく解答の内容を覚えてください。

しかし、初心者が問題集の暗記を進めているとマジで何の話かわからなくなります。そもそも用語がわからん、と。あまりにも分からない用語を覚えようとするとつらくなりますよね。
そういう時は参考書をチラ見します。用語の解説をざっくり読み、「詳しくはわからんけどこういう働きをするものなのかな……?」くらいの認識を得られたら問題集に戻ります。
あくまで暗記がメインであって、理解を深追いしてはいけません。

さすがに計算問題に関しては数値ではなく計算式(公式)を覚えておきましょう(まあ、「式がマジで何言ってるかわからん」だったら数値だけでも覚えたほうがマシですが)。

法規の対策

法規は覚えるだけと思われがちですが、意外と紛らわしいところで引っかかりがちなので気を付けてください。言い回しとか。

Q符号は紛らわしいものが多く、覚えにくいので要注意です。

モールス信号の対策

分類上は法規になります。

出題形式は以下のようなスタイルです。欧文(アルファベット)が例示され、それに対応するものを選びます。
そのため、若干忘れていても選択肢でなんとかなるケースが多いです。

f:id:lyncs:20210628141837p:plain
http://srz.a.la9.jp/hamtest/ より引用

通信をするには音を覚える必要があるのですが、3アマ対策としては語呂合わせで十分です。
「モールス 語呂合わせ」でググってお好きなものを探してください。

逆に、音や動画のほうが覚えやすいという方はYouTubeを探してみても良いと思います。ただし、覚えるべき対象は和文(日本語)ではなく、欧文(アルファベット)であることに注意してください。

そんな暗記は嫌だ!ちゃんと理解したい!という方へ

法規はともかく、無線工学の部分は実際に運用しないとピンとこない部分が大半です。こんなもん初手で理解できる人間はいないと思います。
とりあえず暗記でもいいので資格を取ってから、無線局を開設するなり、クラブに入るなりして運用してみましょう。その時に仕組みや操作方法を理解していけば十分です。

もちろん、暗記で試験に臨むことが標準になっている状況は私も理不尽だと思います。本当はきちんと理解した人のみが合格すべきでしょう。ただ、現実は理不尽です。
この国は運転免許の筆記試験もいわゆる「クソ問題」が出題されます。安全に運転するための経験を積むには実際に道路に出ないといけない、その権利を得るには理不尽な試験を突破しないといけない。
それと似たようなものではないでしょうか。

「理解に時間がかかって合格できず、無線局に触ることができない」という人と、「暗記で合格したので理解は微妙だが、無線局を触りながら実体験としてどんどん理解が進む」という人ではどちらが良いでしょうか。私は後者だと思います。
車の運転で、教本だけ読み込むより実際に運転する人のほうが上手くなるのと同じです。

勉強時間

最短は一夜漬けです。筆者が実際にやりました。流石にしんどいけど出来なくはないです。

まあ、健康や勉強効率の面で一夜漬けは推奨できないので、1週間程度あれば良いのではないでしょうか。実際、1~1.5時間/日 × 7日あれば余裕だと思います。
学業や仕事の関係でまとまった時間を確保するのが難しかったり、暗記が苦手だったりという方はもう少し時間を確保したほうがいいかもしれませんが、それでも最長2週間~1ヶ月程度でいいでしょう(それ以上掛けるのは勉強のプラン自体が間違っていると思います)。実際、「暗記が苦手なので2週間かけて勉強したが、それで合格できた」のような体験記も見かけます。

繰り返しますが、勉強時間のほとんどは過去問の暗記にフォーカスしてください。細かい仕組みを理解しなくても合格はできます(これは試験制度の問題であって、暗記するあなたが悪いわけではありません)。
ある程度暗記できたら参考書に移って理解を深めてもいいでしょう。そうすれば傾向の違う問題が出てきても対応できるようになり、満点も狙えるはずです。また、暗記できていると不思議と参考書の内容もスラスラ入ってきます。いずれにせよ、暗記が最初、理解が次、です。

暗記出来てきた、と思ったら以下のサイトを使ってチェックしていきましょう。
間違えた問題は繰り返し学習するとよいでしょう。

srz.a.la9.jp

筆者は上記のサイトを会場に向かうときに使っていました。

受験

注意:新型コロナウイルス感染症の影響でこの辺の事情が大きく変わっています。随時、最新の情報をご確認ください。

東京の会場(日本無線協会)では、原則毎月第3日曜日に「当日受付試験」が開催されています。これが気軽なのでおすすめです。 東京に赴くのが不便な場合は年に各地で1~3回開催されているので、そちらもご検討ください。

受験料は5,200円、試験申請書の用紙が120円です。事前申込みは不要で、当日に会場で申込みと支払いを行います(注:2021年現在は感染症対策のため、事前の電話予約が必要)。 最新情報は変わっている可能性もあるので、 http://www.nichimu.or.jp/ を確認してください。

下宿に住んでいるなどの理由でまだ住民票を移していない学生も居ると思いますが、各種申込みは現住所で大丈夫です。(2017年秋時点)

  • 持ち物
  • 鉛筆
  • ボールペン
  • 消しゴム
  • 6ヶ月以内に撮影した証明写真2枚(縦3.0cm、横2.4cm)
  • 住民票の写し(免許申請用)

受験の流れ(当日受付試験の場合)

以下は2017年の状況です。

  1. 試験会場に行き、試験申請書の購入と申し込み・受験料支払いを行います
  2. 試験開始を待ちます。参考書の確認でもしましょう。
  3. 試験は1時間10分ありますが、両面印刷の試験用紙が2枚だけなので、10分~15分で解き終わります。30分で途中退室できるため、受験会場の9割が30分経過すると退出します。
  4. 試験終了(1時間10分経過)後、40分~1時間で結果が廊下に張り出されます。それまで待ちましょう。
  5. 合格を確認したらそのまま免許の申請に行きます。

免許の申請

当日受付試験では、試験終了後に免許の申請ができます。申請料は2,100円、用紙が170円です。 「本人確認書類が必要」と書いてありますが、最近は住民票の写しor住民票コード以外認めてくれません。パスポートも運転免許証もNGだそうです(昔はOKだったそうですが)。なお、既に無線従事者免許を所持している人はそれが使えるようです。

パスポートと運転免許証だけを持参した筆者は泣く泣く帰りました。もし当日に申請できなくても後日実施できます。

資格取得後

資格取得し、免許証が交付されると晴れてあなたも無線従事者です。

その後は無線機を購入して「開局」するもよし、無線クラブに入るもよし、CanSatCubeSatに使うもよし、ドローンでFPVをするもよし。また、上位資格の1アマ2アマにチャレンジするのもよいでしょう。
各々のスタイルで無線を活用して楽しんでいきましょう。