LYNCSブログ

慶應義塾大学公認学生団体 宇宙科学総合研究会(LYNCS)のブログです。

基礎の数学 (1)

僕が大学生になって初めて買った数学の書籍は数論〇説でした. 意気揚々と取り組んだところ読み始めて間もなく,

写像Cは\mathbb{R}-\mathbb{Q}から\displaystyle\sum_{2}^\infty\mathbb{N}への全単射である.

という定理を示すとか出てきやがって,先輩の「大学の数学の本は前提知識の導入もしてくれている」という言葉を思い出しながら悶絶しました.(この書籍は証明の行間も省きまくりでかなりしんどかったです)

数学を学ぶにしても,掛け算が分からなければ因数分解なんて理解出来やしないように,それなりの前提知識は必要なわけですたぶん.

知らない概念が出てくる度に調べるのも悪くはないですが,どうせならはじめにまとめて導入してしまいましょう,ということで大学数学を勉強し始めるにあたって必要そうな前提知識について数回に分けて生意気に記事なんかを書いてみます.


1 命題・論理

数学における命題(proposition)とは,それが正しい(真)かあるいは正しくない(偽)かのどちらに定まる主張のことである.

命題のうち,特に重要なものは定理(theorem)と呼ばれる.

命題Pに対して,\lnot PP否定(negation)という.\lnot Pは,「Pでない」ということを表し,P\lnot Pでは真と偽が正反対になっている.

2つの命題P,Qについて,「PまたはQ」という命題をP \lor Q,「PかつQ」という命題をP \land Qと書く.\lor論理和選言(disjunction),\land論理積連言(conjunction)と呼ばれる.

PまたはQが真である」というのは「PQの少なくともどちらか一方が真である」ということであり,

PかつQが真である」というのは「PQがともに真である」ということである.

PならばQ」 (P \Rightarrow Qと書く)は「Pが真であるときは必ずQも真である」という事を主張している.

Pが偽であるとき,これは何も主張していないという事になる.

また,P \Rightarrow Qが成り立つことを

  • QP必要条件(necessary condition)である.

  • PQ十分条件(sufficient condition)である.

と表現することもある.

P \Rightarrow QQ \Rightarrow Pが同時に成り立つとき,PQ必要十分条件(necessayr and sufficient condition)であるといい,P \Leftrightarrow Qと書く.

このとき,QP必要十分条件という事も出来るので,P \Leftrightarrow Qとも書ける.

P \Leftrightarrow Qが成り立つとき,「PQ同値(equivalent)である」と言う.

Q \Rightarrow P,\lnot P \Rightarrow \lnot Q,\lnot Q \Rightarrow \lnot PをそれぞれP \Rightarrow Q(converse),(inverse),対偶(contrapositive)という.

対偶と元の命題は同値である.

「任意の(全ての)nで……」(\forall n (for all)を用いる)とは「どのようなnを持ってきても……が成り立つ」という意味であり,日常で使われる用法とは少し異なる.

「……nが存在する」(\exists n (exists)を用いる)とは「……を満たすようなnが存在する」という意味である.

例えば\forall n \in \mathbb N \mspace{5mu} P(n) (任意の自然数nP(n)が真)は,「自然数のうちどんなnを持ってきてもPは真である」という事を主張している.


\mathbb N自然数全体の集合を表す際によく用いられる.

他にも,

  • 実数全体の集合を表すのに\mathbb R

  • 整数全体の集合を表すのに\mathbb Z

  • 有理数全体の集合を表すのに\mathbb Q

  • 複素数全体の集合を表すのに\mathbb C

がよく用いられる.

\inは集合について用いられる記号であるが,詳しくはまた別に説明する.


\forall n \in \mathbb N \mspace{5mu} P(n)の否定を考える.

これは「Pが偽になる自然数が少なくとも1つでもある」ことなので,「Pが偽になるような自然数nは存在する」と言い換えることができる.

則,\exists n \in \mathbb N \mspace{5mu} \lnot P(n)と書くことができ,\forall\existsが入れ替わっていることが分かる.


参考

斎藤正彦(2002)『数学の基礎 集合・数・位相』東京大学出版会.

中島匠一(2000)『代数と数論の基礎』共立出版.

(おにゃ)