LYNCSブログ

慶應義塾大学公認学生団体 宇宙科学総合研究会(LYNCS)のブログです。

無償労働者の進捗を煽る方法(部誌2018報告)

 初めましてな方が多いと思います。現天文研究本部副代表です。
 僕は今年の三田祭で配布する予定の部誌「Escape Velocity Vol.2」の編集長を担当しました。去年もこのブログで告知したり、寄稿の一部を掲載したりしました。そんなわけで、今年も宣伝がてら紹介をするつもりだったのですが、正直ただ宣伝するだけじゃあ面白くない。そんなわけで、部誌作るときのマネジメントもどきみたいな話や、修羅場体験談や、公開反省会やらをまとめて書いてしまった方が面白いのではないか、と思いこうなったわけです(タイトルについては後々説明します)。まあ、サークルで部誌とか作る人の助けになったりならなかったりすれば幸いです。
あ、ブログなので部誌よりも軽めに書いてるつもりです。あんまり突っ込まないでもらえると嬉しいですね。

テンプレート作成

 部誌のプロジェクト自体はかなり早くから動き出していました。11月末が三田祭なのですが、5月の中旬か下旬ぐらいには僕が担当することに決まっていたと思います。そして、まずはじめに行ったのがテンプレート作成です。
 部誌とかの小冊子は、周囲の余白のサイズ・フォントの種類・形式などが統一されているかいないかで、大きく印象が変わります。今回の僕らの部誌はLaTeXで作成する予定だったので、プリアンブルとかがあるので特にテンプレートが重要だったわけです。
 僕としては夏休み中にテンプレートを作りたかったので、プランとか記事の内容とかを大まかに相談してからはずっとテンプレート作成に挑戦していました。毎日LaTeXと向き合い、エラーと戦い、仕様に怒り、アドバイスしてくれる先輩に感謝し、そうして作り上げた素晴らしいテンプレート!

 ……は、すぐに投げ捨てました。
 もちろん、余白の設定とか、ページ数設定とか、中央寄せのタイトルと筆者表記とか、ちゃんと使った部分もたくさんあります。でも、二段組の設定とか、それに合わせた余白調整とか、各セクション用の専用コマンドとか、頑張って作った様々な要素の大半は無駄になりましたね。まあ必要のない要素だったので削ったというだけで、仕方ないと言えば仕方ないのですが……。まあ、なんか悲しいですよね、うん。

メンバー決定

さあ、突然ですがここでクイズです!

問題:部誌に必要不可欠な内容を書いてもらいたい時、以下の3人のうち誰に頼むのが適切でしょう?
1:やる気に溢れた、記事を書きたくてたまらない人物
2:やりたい気持ちはあるにはあるが、やるべきかちょっと悩んでいる人物
3:死んでも書きたくないと主張する人物


 読者の皆さんは何でいきなりクイズ? って反応ですかね。まあ、説明に向いていたんですよ。
 このクイズ、色々意見はあるとは思いますが、僕の回答は2番です。
 理由を説明しましょう。まず3番は論外です。うちのサークルはやる気のない人間に肉体言語で語りかけ仕事をさせるような団体ではないので、やりたくない人に強制はできません。そうなると、1番か2番になりますが、ここで考えるべきは2番の人が悩む理由です。
 2番の人は、本人が書きたいか、それとも部誌の担当者に気を遣ってかはわかりませんが、少なくとも部誌の記事を書いてあげようという意思はあります。ですが、書くかどうかについては悩んでいる状態です。この場合、

「書きたいのは書きたいけど、私程度の日本語力で通用するのかしら……?」

 って悩んでいる人はほとんど、というか全くおらず、

「書きたいけど、忙しいからできるか不安だなあ」

 という人が大半です。
 何が言いたいかと言うと、書くべきか悩んでいる人というのは、「締め切りまでに作業を終わらせられるか」という点を見据えた上で、部誌の原稿を引き受けるべきか悩んでいるのです。
 で、じゃあ1番の人はどうなのかというと、これには2パターンあり、

A:「時間にも余裕があるし、この締め切りまでなら書けるだろう。やりたいな」
B:「先のことは知らんけどやりたいわ!」

 となっています。要するに、先のことを考えず、今なんとなく自分がやりたいからという理由で引き受けるような奴が含まれている可能性があるってわけです。
 こういったわけで、「やる気のある人」と「ちょっと悩んでいる人」なら、「ちょっと悩んでいる人」の方が締め切りを守ってくれる可能性が高い、と僕は思います。今回の部誌でも、必要な各本部紹介はちょっと悩み気味の人に任せ、最初からやる気のある人は寄稿に回すという対応を取りました。まあ、意外にもみんな書いてくれたので、この方法が成功したのか失敗したのかはよくわかってないですけれど。

タイトルについて

 今回、作成された部誌は三田祭で無料配布されます。言ってしまえば何の対価もない無償労働であり、周りの空気を読んで原稿を書いた人にはなかなか面倒な作業だったろうな、と思っています。ですが、サークルの仕事にはこういった「活動の本筋と違うし、対価もないけど、誰かがやらなきゃならない」がとても多いです。本当に。ここまでの文章では「やる気のある人間は信用ならん」だの「今なんとなく自分がやりたいからという理由で引き受けるような奴が含まれている」だの結構言いたい放題書いてますが、部誌を実際に書いてくださった方々には本当に感謝しています。が、感謝はしても締め切りは守ってもらう必要があるし、そのためには進捗を確認していきたい。そういうわけで、今回の記事は「無償労働者の進捗を煽る方法」というわけわからんものになってしまったのです。
 無償の仕事というのは引き受けるときの心境が複雑なことが多く、非常に大変です。無償の仕事なんか大半の人間はやりたくないので、やる理由の多くは「やらなきゃいけない空気だったから」みたいになります。この時、こういう理由から仕事を引き受けた人は、事実上は自分からその仕事に立候補したけれど、気持ち的には嫌々参加させられた気分、みたいになってることが多いです。そういう人間に対して「お前がやりたいって言ったんじゃん」というノリで責めると「別にやりたくてやるって言ったわけじゃない」となり、かなり不穏な空気になります。まあ直接言って不穏になるだけならまだいいですが、多くの場合、直接言わず心の中に仕舞い込んだりすることになるので非常に難儀なのです。どういうことかと言うと、心に仕舞い込む人は、「自分から立候補した」という事実を認識しつつ、気分は「無理やりやらされた」という感覚なので、認識と受ける感覚にズレがある、と言う場合が多いです。結果、そのズレがサークル自体に対する居心地の悪さや空気の悪さという考えに変わり、そのままサークルを辞める原因になったりします。僕自身、何度かそんな感じの人を中学とかで見たことがあります。そんなわけで、無償で働いている人には、それなりの対応が必要になるのです。
 で、なんでいきなりタイトルの話なんかしたかと言うと、ここから進捗を煽る準備とか実際に煽る話を初めていくからです。まあ、あんまり大した内容ではないですけどね。

締め切り決定

 8月の前半ごろには、ほぼ担当が決まっていたと思います。うろ覚えですが。そして、そこで僕は原稿の締め切りを9月のはじめに設定しました。
 慶應大学の生徒ならわかると思いますが、これは期間としてはすごく長いものです。慶應は8月いっぱいと9月の最後の方以外は基本的に夏休みなので、部誌の原稿を書くだけに休み1ヶ月を用意したことになるわけです。もちろん、夏休みを丸々使って生み出される素晴らしい原稿を期待してこういう締め切りにしたわけではないですし、というか、多分みんな直前に徹夜するんだろうな、と思ってこの締め切りにしています。まあ、それなりの意図があるわけです。
 これに限った話ではないですが、今回の部誌では真綿で首を絞めるようなシステムを目指していました。口は悪いですが、要するに原稿が遅れた際に「こんだけ用意したのに遅れたの?」という空気を作り出せる用意をしたわけです。9月に締め切りを持ってきたのも、「夏休み挟んでおいて忙しかったとは言わせんぞ」という状況にするためです。これ以外でも、本来必要であろう日程を5倍したぐらいの余裕を持ってプランを立ててあります。
 もちろん、そこを利用して直接的に本人を責めたりはしません。そういったことでマウントを取って責めてみたり怒ってみたりするのは幼稚です。部誌作成に最大限利用するなら、そういった部分には黙っておいて、ただ進捗を確認し続ける方がよっぽど効果があります。少なくとも、締め切りまでに作業しなきゃいけないという意思のある人間には効果的です。そういったやる気のない人間に無言の圧力的なやり方は聞きませんが、元からそういった人を相手にするつもりはないので、特に問題はありません。
 そんなわけで、締め切りを決定した時点で、進捗を煽る用意ができたわけです。こういう空気を作る方法だとサークルに対して変な思いを抱かれるんじゃない? という意見もまあわかります。ですが、手段がかなり間接的なのでサークルへの不満より自己嫌悪とかに繋がりやすいんじゃないかな、というのが僕が見ている中での感想です。まあ自己嫌悪も良くはないのですが、締め切りに間に合わなかったことに対しては何かしらの不快感は覚えてもらう必要がありますし(別にすぐに対応してくれるならここまでする必要はないのだが、こちらから動かなければならないような状態ならこういった対応をしてもいいと思う)、それがサークルに向かないだけでも万々歳だと僕は思っています。だいぶひねくれてますかね。

作業と作業遅れ

 うちのサークルの人間は締め切りに遅れることが多かったので、元から期待せず多めにみて締め切りを取っていましたが、それでも予想通り遅れる人間がかなり出るとそれなりに悲しくなるものです。まあ、それなりですけど。
 さて、締め切りになっても間に合わない人がたくさんいたのですが、これについては個人的なミスもあったのであまり進捗を煽ったり無言の圧力をかけたりできませんでした。僕が仕事を振り忘れた代表挨拶や、本部での分担を明確に指示していなかった・するのが遅かった工学の紹介記事の一部なんかがそうです。まあ、こういうときは素直に我慢するしかありません。
 ですが、それ以外にも遅い人は出てきます。締め切りを1日過ぎただけとかならわかりますが、それ以上だとまだやってないと考えるのが妥当になってきます。こういうときは、具体的に対応方法をいくつか示して確認するといい、と思います。

 これは個人的な主張なのですが、失敗した際の謝罪やら土下座やらは全くもって無意味であり、重要なのは失敗に対する対応と次失敗しないための対策を行うことだと僕は思っています。反省というのは対応と対策を行う姿勢で見せるものであり、言葉で色々飾っても何の意味もないし時間の無駄だしログが流れるだけ、という考えなわけです。なので、締め切り過ぎてもできてなさそうな人には、別に謝らなくていいから対応として現状を報告して欲しいのですが、これが経験上あんまりうまくいかないもんです。多分、小中学校とかだとこういう時とりあえず説教する人が多いせいで、「何とかやってから報告しよう」とかそういう方向に考えが向いてしまうのだろう、と僕は考えています。まあ失敗しないことがベストなのでそれも間違いではないのでしょう。ですが、説教というのは先述した反省の姿勢が見られない人間に対して行動を促すために行うものであり、絶賛反省中で今対応しますって人に無理に説教するのはただの八つ当たりに近いです。

 というわけで、こういう時は具体的な対応方法をリストアップして送信するのがいいと思います。「書けないなら書かなくていいから(寄稿者のみ)」「とりあえずどこまでできたかだけ見せて」とか、そんな感じです。間に合って当然という状況には黙りつつ、こう言った確認だけ連絡するのも、まあまあ効果があると思いますし。行き詰まってそうなら、こちらから選択肢を提示する、というのも手段としては良いです。それでも反応がないなら、強気に進捗を確認し続けましょう。サークルに残る気があるなら、いつかは反応しなきゃならない連絡です。これでダメならどうしようもありません。悲しい……。

結果とか

 その後、何度も「書けた」ってただ確認し続けたりして、部誌は無事に完成しました。データが揃ったのが本来の予定より1ヶ月以上遅れ、部誌本体の製本はついこないだできたばっかです。こればかりは「締め切り早めにしておいてよかったなあ」と自分で自分の過去の行動に関心しています。まあ、それとは別に、僕個人としてはデータをすっ飛ばしたという非常に大きい反省点があるんですが……まあ印刷はできたので許してください……。

まとめ

 今も夜中に眠い目擦りながら文章書くくらいには修羅場ですが、まあ楽しんでやってるんでセーフでしょう(何がやねん)。こんな各会員の血と涙から生まれた部誌「Escape Velocity Vol.2」、三田祭にご来場し、LYNCSの出展場所にお立ち寄りになった際には是非ご一読ください。あと、プラネタリウムとかも見ていってくださいね。そっちがメインですけど。